茨ちゃんは勘違い
「アタシが常日頃からフェロモン全開にしていたら、世界中の男が虜になっちゃうでしょ?アタシは普段当たり前のように生活しているけれど、こうして魅力を内に内に抑え込んでいるのよ!」

こうして、と言いながら茨は和式便器で踏ん張るかのような力む姿勢になる。

端から見れば、便秘一週間といったところだろうか。

「もしもアタシが魅力開放状態で日常生活を送っていたら、今頃あそこのバスの運転手さんも、前席で座っているややイケメンも、妻子彼女を放ってあたしの靴を舐め始めるわ。強力かつ一思いで愛しの彼をGETするには、全力の一撃があれば十分なのよ」
「そそそ、それは大変だねぇ...」

木更津は苦笑いをすると、チラっとフロント先端にあるバックミラーを覗く。

聞こえていたのか運転手さんが、ゲンナリした表情を浮かべていた。

「アタシに感謝しなさい!それほどの魅力を封じながらあんたに付き合っているアタシに!」
「はは...はははははー...」

茨が鼻の穴を北島三郎ばりに膨らませつつ胸を張ると、木更津は肩を落としながら笑った。
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