茨ちゃんは勘違い
 少しゆるいウェーブのかかったパーマを施し、やたら長い化石級のロングスカートを穿いて、ヤンキー座りをした畑山が百合絵に因縁をつけていた。
 その口には、やたら柄の長いチュッパチャップスを咥えている。
 百合絵はもう一度溜息を吐くと、諭すように言った。
「……畑山先輩……無理にグレようとしないで下さい。先輩のキャラじゃないですし、ぎこちなさ過ぎじゃないですか。ありのままの先輩に戻りましょうよ」
「そ、そんなことないもん! 私、生粋の不良だもん!」
「いやいやいや。未だに水泳部を辞められない人が何を言いますか」
「や、辞めるもん! そ、そうだ白石。俺は今日、部活サボッちゃうぜ~へへ……」
「そもそも不良は部活動に在籍しないので、黒酉先生に退部届を出すのが先ですね」
「……それは……また別の機会に」
 畑山は明後日の方向を見ると、百合絵が買ってきたあんぱんを口にほうばった。
 百合絵は、小さく肩を落とすと、畑山に言った。
「大丈夫です。私はまだ先輩のこと見離したりしませんから。失恋の傷、まだ癒えないんでしょ?」
「してねーし! 失恋なんかしてねーし! ……グスン」
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