茨ちゃんは勘違い
 中に居る茨の肩がビクリと震えた。
「私と畑山先輩なんかどうなるのよ! 片思いしていた人に、理不尽に振られて……私なんかクリスマスに風邪ひいて、さっきまでボッチだったよ!! それで今はトイレでブチ切れて……ははっ、私ほんと、何やってんだろ……」
 百合絵の眼に、思わず涙がこみ上げてくる。
「ねぇ、出てきなよ。いつもの茨ちゃんはどうしたの? こんなの……茨ちゃんらしくないよ……」
 そこまで百合絵は言うと、崩れ落ちるように座り込んだ。
 もう、体調も限界だ。
 このまま寝てしまいたい。
 百合絵がそう思った時だった。
 静かに、何かを引っ掻くような音を立てて、ドアが開いた。
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