茨ちゃんは勘違い
「えー…、え~とですねー…茨ちゃ…城山さんの鼻血量が救命病棟行き一歩手前な気がするので、手遅れにならない内に保健室に連れて行きたいのですが…」

黒酉は鼻でフンと笑うと、再び進行方向へ視線を戻した。

「消しゴムでも詰めておけ」

そう吐き捨てるように言うと、さっさと廊下へ出て行ってしまった。

な、なんていうか…

あの先生はPTAとか教育委員会とか文部省とか、そういったモノが全く怖くないんだろうな、と百合絵は思った。

「ユリユリ~二日目の生理より酷い事になってるよ~」

ボタボタよりドバドバという擬音の方がピッタリな有り様の茨が、百合絵に涙目で救いを求めてくる。

う~ん…困ったなぁ…

いっそ、黒酉が言うように消しゴムか、多い日も安心な羽根付きなヤツを、サブちゃんバリに開いている茨の鼻穴に突っ込んでやろうかと考えた。

百合絵の茨に対する扱いが、友人やクラスメイトではなく、いじめられっ子な感じで、教育的指導が必要な気がするのは、恐らく気のせいでは無い。

連れて歩くだけで恥ずかしい気がする茨と共に、保健室を探すだけの為に校舎内を練り歩くのは、精神的に耐えられないので、このまま放置して帰宅するのがベストという考えに百合絵が至ったあたりで─。

見覚えのある二人組が、通りすがった。
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