茨ちゃんは勘違い
百合絵は頭の中を整理する事にした。

今、多分恐らく、茨ちゃんは私の上履きを間違えて履いている。

で、何故だか大量のラブレターを両手いっぱいに抱えて走り回っている。

つまり…なんだコレは。

ブツブツと独り言をしていると、瞬間、百合絵にこれまでに無いぐらいの悪寒が走った。

つまり…

つまりつまりつまり…



私宛に来たラブレターを自分に来たものだと『勘違い』して、今正にその男子達の元に向かっている…と。



「ぎゃあおおぉおおぉっ!!!!」
「ひぃっ!?」

思わずゴ○ラ並みに叫び声を上げた百合絵に、桜は仰天し腰を抜かした。

百合絵はそれに構っている余裕は最早無かった。

「あんの野郎ぉぉおぉっ!!!!」

茨が履く筈だった上履きを引っ張り出すと、百合絵は陸上部短距離走エースになれるんじゃないかってぐらいの勢いで、教室へ猛ダッシュした。

独り、取り残された桜は呟いた。

「やっぱ…面白い子だなぁ。仲良くなれるといいなぁ」

この娘も、ネジが何本か足りないようだ。
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