茨ちゃんは勘違い
ガチャガチャ…

ガチャン!

部屋の鍵を開ける音がした後、ギシギシと床を踏みしめながら肥満気味の男が居間に現れた。

「ただいまー…ってあれ?ママはこんな所で寝ちゃったのか…あ!こら!茨!こんな遅くまで起きて何やってるんだ!?」

帰ってきて早々に怒鳴り声を上げた父親の方に、茨は振り向いた。

彼女の目はどこか虚ろで、焦点が定まっていない。

「…茨?ど、どうした?」

頭を微妙に揺らしながら、ブーさんを無惨な姿にしている茨に、父親は不審に思った。

だが、父親の心配を他所に、茨の頭の中は「せかいでいちばんうつくしいじょうおうさま」のイメージが組み込まれ、強烈な変貌を遂げてしまっていた。

「ああ、おそかったわねぇ…」

その瞳に妖しい光を宿して…。




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