茨ちゃんは勘違い
これから一年間過ごす事になるA組~E組のクラス表が掲示板に張り出され、その前に沢山の生徒達が群がっている。

少女───白石百合絵(しらいしゆりえ)も、他の生徒に倣って、自分の名前を無数の中から探した。

『出席番号17番・白石百合絵』を見つけると、大した驚きも喜びも無く、人に聞こえないくらいの声で呟いた。

「B組かぁ…」

念のため…

百合絵は、『あの子』の名前がB組に無いか探してみた。

…すぐに見つかった。

「…はぁ……。」

参った。

偶然というのは恐ろしい。

それが重なれば重なる程、ただの必然になってしまう。

自分が受験で失敗しなければ、普通にこんな学校に来る筈ではなかった。

ただ、元々第一志望で受けた学校がここよりさらにレベルの高い学校だっただけ。

そして…この学校も然程悪い学校でも無かったから、第二志望にしてしまっただけの話。

それが何の因果で、『彼女』と同じ学校生活を『もう一度』三年間共にする羽目になるのだろうか。

新しい制服に身を包んだほぼ初対面の同級生達は、それぞれ皆十人十色の期待と不安に満ちた表情をしているのに、何故私だけ初日からどんよりとした曇り空のような気持ちにならなければいけないのか…。

百合絵は重い足取りで、苦渋に満ちた表情のままB組へと向かった。
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