茨ちゃんは勘違い
下駄箱におろしたての革靴を入れて、上履きに履き替えると、三階にある一年の教室を目指す。

百合絵と同じように、他の新入生達も初々しい雰囲気を身に纏い、それぞれの教室へと入っていた。

B組のクラスに入ると、黒板に「廊下側一番手前が出席番号①になります。そこから窓側一番奥まで順に座って、担任の教師が来るまでお待ち下さい」と、赤いチョークで書いてあるのが見えた。

(15…16……ここか…)

百合絵は、自分の席を見つけると、手持ちのバックを机に置き姿勢を正して大人しく待機する事にした。

しかし、どうしても気になる事があり、チラッと後ろの席を振り返った。

まだ後ろの席は誰も座っていない。

(…まだ、来てないようね………)

どうせなら、このまま来なきゃいいのに、と、百合絵は思った。

再び前に向き直り、次々に入ってくるクラスメイト達と会釈を交わす。

(余計な事を考えちゃ駄目っ!『彼女』と同じクラスって事以外は普通なんだから、もっと楽しい事を考えなきゃ!)

私と同じクラスになった中の、何人と仲良くなれるのか…

何れ始まる体育祭や文化祭は、どういった催しになるのだろうか…

新しく芽生える恋はあるのだろうかとか…

兎に角、百合絵は必死に楽しい事を考えた。
そんな物思いに耽っていた百合絵の背後から…

「…ゆ~り~ちゃん」

ヒキガエルを「轢きガエル」にしたような声で、名前を呼ばれた。
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