ねこねこ幼女の愛情ごはん〜異世界でもふもふ達に料理を作ります!〜3
「今日も異常なし、だな。……エリナはミメットの家でぐっすり寝ているかな?」

 ひとまわりして街の安全を確認し終えた狼隊長は、怪しい気配はないかと耳をすませながらも、今度は大切な家族である小さな白い耳を持つ子猫の心配を始めた。

 突然この王都に……というか、ルディがぐっすりと眠るベッドの中に現れた不思議な子猫であるエリナを引き取ってからは、この町に慣れていない彼女をひとりにするのは忍びないとばかりに夜の仕事を控えていた彼だったが、気風がよい娘猫であるミメットの家に子猫をお泊まりさせるなら大丈夫だということになり、すでに夜勤は何度もこなしている。

 ちなみにエリナもミメットも『全然心配ないから、気にしないで夜勤のお仕事をするように』と口を酸っぱくしてルディを説得していた。
 なにしろ(これは秘密だが)エリナの本当の年齢は21歳だし、スカイヴェン国の王都で定食屋を営む青弓亭で料理人として一人前の仕事をしている、大変しっかり者の勤労子猫なのである。
 しかし見た目はまだまだ幼い子猫なので、心配症のお父さんのようになかなかエリナを置いて行けず、渋るルディであった。
『フェンリルの特別ふわふわした尻尾でよくくるんで寝かしつけないと、エリナが風邪をひくのではないか』と心配をするのは、いくらなんでも過保護すぎるのだが……。

 夜の王都を見張る彼の視界に、金の光が入った。それは光の粉を撒き散らしながら、音もなく屋根から屋根へと飛び移っている。
 光の塊はふたつあり、目まぐるしく位置を変えながらルディの方に近づいてきている。

「おやおや、今夜も謎の白猫たちが元気に登場したようだな」
 
 任務中は厳格な顔つきのルディであったが、光の動く様子を目で追いながらそう呟く口元には、柔らかな笑みが浮かんでいた。
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