ねこねこ幼女の愛情ごはん〜異世界でもふもふ達に料理を作ります!〜3
「クー・シーちゃんってば、ちょっと動きが速すぎるよおっ、えいっ」

 屋根から屋根へとちょこまか逃げ回る真っ白な子犬を追いかけながら、長い髪をなびかせた美しい少女が文句を言った。彼女は月の光の下で輝く新雪のような真っ白で艶やかな髪を持ち、その頭には、白くふんわりした猫耳がついている。おしりから伸びた長い尻尾も見事に真っ白だ。

「あはは、だってこれは鬼ごっこだもん、急いで逃げなくっちゃ! ほらこっちこっち、鬼さんエリナ、がんばれー」

 子犬は走りながら器用に前脚で宙をかき、そこからは金色の光が現れてふたりの身体を包んでいく。
 これは不思議な力を持つ″妖精の粉″というものであり、静かな夜に鬼ごっこをするふたりはこれのおかげで誰の目にも留まらないのだ。

「んもう、全然追いつかなくて悔しいなあ。これは遊びじゃなくて訓練でしょっ、少しは加減してよっ、てば!」

「訓練なら余計に本気で逃げなくちゃねー、ほらほら、まだまだだよっ、それっ」

「にゃん!」

 子犬を捕まえようと伸ばした腕が宙をかいて、美少女はバランスを崩す。胸に下がった、虹色に輝く円環状のペンダントトップがきらめいた。
 これはただのアクセサリーではなく、妖精たちの取りまとめ役をしているフォーチュナと犬の妖精クー・シーが、エリナのために力を合わせて作り出した″妖精の環″という特別なアイテムなのである。

「わっ、ととと……なんて素早い子犬なの!」

「お褒めに預かり光栄だよ。エリナもなかなかやってくれるじゃない、君ったら意外とおてんばさんだったんだね……そういえば、トラックに轢かれそうな僕を助けてくれた時も、なかなかの身のこなしだったっけ」

 空中を一回転して逃げ回る子犬の前で、屋根から落ちそうになった白猫の少女は、危なげのない身のこなしで屋根の上にふわりと片手を着いた。そのまま身体を大きく回転させて、柔らかな動きでいったん地面に降り立つ。

 そして、膝を曲げたかと思うと、重力を無視して高く飛び上がり、まるで宙を舞い踊るような美しさで屋根の上の子犬の前に戻ってきた。

< 3 / 235 >

この作品をシェア

pagetop