堅物女騎士はオネエな魔術師団長の専属騎士になりました。
――そして、パーティー当日。
パーティーは昼頃から始まる。朝ジークウェルトの部屋へ向かえば、ジークウェルトはすでに化粧道具を準備して待っていた。
「おはよーマリーちゃん!早速始めましょう~!」
いつもはジークウェルトが座って化粧をする椅子に、今日はマリアベルが座ることになる。おずおずと座れば目の前にはマリアベル自身の顔が鏡に映った。
化粧けのない、地味な顔。肌も少しくすんで見え恥ずかしくなる。
表情が曇った。そんなマリアベルをジークウェルトは後ろから鏡越しで見つめながら言った。
「大丈夫よ、アナタは絶対綺麗になる。だから自信を持ってね。……さあ目を瞑って、お化粧を始めるわ」
マリアベルはゆっくりと目を閉じた。
ジークウェルトの滑らかな指が顔中を這い、心地よいようなこそばゆいような、そんな感覚を味わう。
(……気持ちがいい。油断したら寝てしまいそうだ)
どんな風に変わるのだろう、不安と期待が入り混じる。
その間もどんどんとマリアベルの顔に化粧が施されていった。肌、眉毛、目元、唇……、休みなくどこかしら触れられて塗られていく。
時々かかるジークウェルトの吐息にドキドキしながら。