託宣が下りました。



 幸いなことに馬に怪我はありませんでした。わたくしたちは次の宿場で、予定を変更して一晩泊まることにしました。

 宿場には簡単に診察のできる医師がいます。診てもらったところ、体の頑丈なラケシスは大丈夫でしたが、わたくしの打身の多さが問題でした。

 けれどそれだけで済んだことが僥倖(ぎょうこう)だったのでしょう。とにかく今夜は大人しくしていなくては。


 カイ様はサンミリオンまでついてきてくださるとのことで、別に部屋を取ることになりました。
 御者のレイモンドも一晩休ませたのち、明日には別の馬車を手配してサンミリオンまで運ぶ予定です。

 ソラさんは……王都に戻るように言ったのですが、ついてくると聞きません。

 カイ様が責任を持って帰りも送り届けてくださるそうなので、わたくしは仕方なく、ソラさんの同行を許可しました。

 そして、せめてものお詫びに――今夜はソラさんと同じ部屋に泊まることにしたのです。



「巫女! 遊ぼう、ネズミで」
「ネズミはちょっと」

 思わず拒否すると、ソラさんはえーと口をとがらせました。胸にネズミの人形を一匹抱え、

「ネズミはかわいい。ほらほら」
「近い近い近いやめて」

(……機嫌が直ったみたいで、良かった)

 あちこちじんじんする体をさすりながら、わたくしはひたすらソラさんの話し相手をしていました。

 王都を出るころには強かった風も、すっかりおさまったようです。天気もよく、この分なら明日はもっと順調に馬車を走らせられるでしょう。

 ――また襲撃されたりしない限りは。

(あれは誰だったのかしら?)

 怪我が痛むたび、そのことを考えずにはいられません。

 カイ様には結局答えを教えてもらえないままです。ラケシスの言う通りわたくしたちには知る権利があると言うものの、聡明なカイ様が『言えない』と言うものを無理やり聞き出すのは、不利益を生むのではないかと思うのです。

 かと言って、このままカイ様にすべてをお任せしてよいのでしょうか?……

 と。ドアがノックされ、ラケシスの声が聞こえてきました。

「姉さん。入るよ」

 ドアを開けるラケシス、、そしてその後ろにカイ様。人間が苦手なカイ様は特に背の高いラケシスが怖いのか、ぶるぶる震えながら陰に控えています。

 廊下は寒いでしょうから入っていただいて、ソラさんを含めた四人でわたくしたちはベッドに腰かけました。
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