託宣が下りました。
「あの、とんでも姫! 父さんと私の前で何て言ったと思う? 『まあ噂通りに何もないところ! ここは何もないことに価値があるのかしら?』」
「……」
「おまけに滞在中あれが欲しいこれが嫌のわがまま放題。いくら王族でも許されることと許されないことがあるんだ!」

 ガンガンとテーブルを連打。ラケシス、あなたの力でそれをやるとテーブルが……あ、折れた。

「あ」

 ラケシスは慌てて折れたテーブルの脚をくっつけようとして……くっつくわけもなく、そっとテーブルを横に倒し、咳払いをしました。

「と、とにかく、王太子といい、あの王族には不安しかない」

 何事もなかったように話を続けようとします。姉さんあなたのそういうところ嫌いじゃないわ。
 でも後で、ちゃんと宿に謝りにいきましょうね。

「王太子様もそんなに困った方なの……?」
「情けない、を絵に描いたような方だよ。優柔不断、意気地なし、何かにつけて後ろ向きで前に進もうという気がない」

 なるほど、それが事実ならラケシスが一番嫌いなタイプの男性です。
 それにしてもずいぶんと容赦がありませんが、王太子様との間によほどのことがあったのでしょうか。

 わたくしはため息をついて、カイ様を見ました。

「こんな話は初めて聞きました。本当なのでしょうか?」

 するとカイ様は前髪に隠れた額をかりかりとかいて、

「……うちの王宮は隠蔽工作が大得意でして」
「……はい?」
「例の……前回託宣を無効とされた巫女の話も、大半の人が知らないのは風化するに任せたのではなく隠蔽した結果かと……」
「……」
「どんな王宮なんだよ!」

 ラケシスが吠えます。実際、呆れた話です。

 たしかに古今東西、王宮は秘密でできているものではあるのでしょうが……

(……エリシャヴェーラ様はわがまま姫?)

 ラケシスが嘘や誇張で人を貶めるとは思えませんので、たぶん事実。そうなると……

(そんな人が、騎士を?)

 奔放な騎士と、別の意味で奔放な姫が結婚。

 ……なるほど。王宮に面白おかしい――もとい、大変な未来しか見えません。というより、そもそも成り立つように思えません。おまけに気の弱い王太子の義弟が騎士とか、どんな笑い話でしょうか。そんな系図になってしまっては、そのうち王宮が騎士に乗っ取られるかもしれません。

(でも騎士は、結婚を断った)
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