託宣が下りました。

 さて、息をひそめながら耳を大きくして兄たちの会話を聞こうとするソラだったが、兄が不必要にあのデカい声をひそめてくれやがったせいで聞こえづらくなってしまった。

(魔術……なんか使ったらお兄ちゃんにバレる)

 元々聴覚を広げる魔術など高度すぎてソラには使えない。カイに絶対習っておこうと心に決めて、ソラはなんとか兄の声を拾おうとする。

「……どうしてもあなたの頭の中に『俺に頼る』という選択肢がないと思うと、さすがに悲しくてな……」

(お兄ちゃん、“ジゴウジトク”!)

 一応ソラもソラなりに、兄が巫女にどんな仕打ちをしたか把握しているのである。

 兄には神経がないのだ。無・神・経、を絵に描いたような男だ。たぶんそれで女の人とお付き合いできないのだとソラはこっそり思っていた。

 今まではそれで良かったのだ。無神経であることは家族にとってはたいしたことではないから(家族全員似たようなものなので)、兄はソラにとって唯一無二、完璧な兄でしかない。それにそのままなら兄を女の人に取られることがない。

 でも、巫女だけは特別だから。兄には頑張ってもらわなければいけない。



 一度、カイに相談したことがある。兄が無神経な言動を取るたびにネズミをけしかけてみてはどうだろう? と。

 カイは曖昧に笑った。「ネズミも食べる彼には意味がないかもしれない」。ちなみに兄は生まれてこのかた腹を壊したことがない。

 ではやっぱり人形だ。そうだ、巫女を模した人形を動かせるようになってやろう。
 そうカイに言うと、カイは口ごもった。

『……それは、ヴァイスは本気で怒ると思うよ』

 どうして? ソラには今でもいまいち分からないのだが――。

「……揃っていれば、俺たちは最強だ。信じていい」

 はっ。兄の話が進んでしまっている! 何の話だろう? あ、アレスのパーティの話かな。

 どうやら兄は巫女のために魔物討伐にでかけるらしい。そうそう、そうやって点数を稼げばいいんだ。恋は地道だ。いきなり食いついては失敗するだけだ。

 うちの兄弟は必ず最初にいきなり食いつくけれど、反省だってできるんだ! 畜生カイのやつ、今に見てろ絶対後悔させてやる!

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