託宣が下りました。

「―――っ」

 はっと騎士が顔を上げました。「誰か来る」

 わたくしを抱きしめたまま、見やるのは家の表の方角。

「誰か……?」

 わたくしはぼんやりと応えました。体がうまく動かず、彼にもたれかかったまま。

「今の声は――巫女のお父上か?」

「!!」

 はたして騎士の言葉は当たっていました。

「アルテナ! ここにいたのか」

 わざわざわたくしを捜しに来たらしい父は、わたくしの隣に騎士がいるのを見てたいそう驚いたようでした。もちろんそのときにはもう、抱き合ってはいなかったのですが。

「お父様、どうしたの? まだお仕事の最中でしょう?」
「いや、今日は早退させてもらった。職員が体調を心配するのでな」
「素晴らしい部下をお持ちですな」

 騎士がそんなことを言い、父は渋面を作ります。「なぜ君が……」とぶつぶつ言っていますが、腹巻きは今日もしているのでしょうか。

「いやそんなことより。アルテナ、大変なことになったぞ」
「大変なこと……?」

 わたくしは眉をひそめました。父がこんなに取り乱すのは珍しいことです。

 よっぽどのことが起こった――?

 星祭りだったんだ、と父は言いました。

「昨夜が星祭りだったんだ、王都では」
「え? 明日ではなかったのですか?」
「今回は色々狂ったらしい。王都の連中の考えることなど知らんが」

 父の言葉はどことなく投げやり。王都への敵愾(てきがい)心は日に日に増しているようです。

 とにかく、と父は口を開きました。王都で起こった、重大な出来事を早口に――。

「星の託宣が、今回も下ったそうだ。『半年以内に、再び魔王が現れる』――と」


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