託宣が下りました。

「………、巫女?」

 騎士の呆然とした声が聞こえます。
 恥ずかしくて顔を見ることができず、わたくしはうつむきました。

「……その、おまじないです。傷が治るように……」

 嘘。そんなの後付けです。

 本当は体が自然に動いてしまっただけ。理由なんかないのです。

 全身が炎にあぶられるように熱くなってくる――。ドキドキと、心臓が大きくなっていく。

 するんじゃなかったと後悔する気持ちと、騎士の反応を知りたい気持ちとで、心の中が嵐のように乱れます。

 騎士は――。
 そんなわたくしを、やにわに抱きしめました。

 土のにおいがいっそう近くなる。彼の、勇ましさの象徴。

「巫女。……アルテナ」

 名前を呼ばれればつんと目の奥に何かがこみあげます。なぜ今、泣きたくなるのでしょう?

 騎士はわたくしの首筋に顔をうずめ、肌に唇を這わせました。くすぐったいような感覚が、わたくしの背筋を駆け抜けていく――。

 触れる吐息が、熱い。

「アルテナ。約束のご褒美をもらってもいいか?」

 強く抱きしめられ、耳元で囁かれ……

 頭の中がぼうと熱に浮かされていくのを、わたくしは感じていました。

 心地いい。流されたい。
 ……今まではそんなことを考える自分が弱く思えて、この気持ちをごまかしてきたけれど。

 もう、いい。嘘をついたままでは大切なことを見失う。わたくしは彼に抱きしめられるのが好き。

 ――彼のことが、好き。



「……あなたらしくありません、ヴァイス様」

 声が震えていた。でも、きっと彼は知らんふりしてくれる。

「考える隙なんか、与えないで」

 いつものように強引に、わたくしから奪っていって。
 今なら全部差し出せる。不安で見せられなかった全てを、あなたに。



 くいとあごを上げさせられて、気がつけば彼の夕日の瞳が目の前にありました。

 彼は、ヴァイス様は、ふわりと微笑んで――

 重なった唇は優しかった。ささやかに下唇を吸われると、体の奥底がじんとうずきました。

 リズムの速い呼吸が徐々に絡まり、交換する吐息が深くなる。熱い舌先がわたくしの唇をなぞり、するりと中へ入り込んでくる。

 頬を撫でられるときゅうと胸が締め付けられました。舌を絡めれば、いっそう熱くなる体。

 わたくしは逃げませんでした。何もかもを任せました。きっと何が起ころうとも、恐いことは何もない――。

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