託宣が下りました。

 というより、優秀なここの家人の方々は、あらかじめ分かっていらっしゃったようですが。

 騎士はしみじみとわたくしの作った料理の載る皿を見つめ、言いました。

「これだけしか食べていないから胸が育たなかったんじゃないのか?」

 わたくしは無言で力いっぱい騎士の手の甲をつねりました。騎士が悲鳴を上げ、見ていたウォルダートさんが横を向き、肩をふるわせて笑っています……。



 食卓についた騎士はあっという間にわたくしの作った料理をたいらげてしまいました。

「ん。うまい」

 わたくしはほっと胸をなで下ろしました。

「良かったです……。修道院のものより味付けを濃くしたのですよ」
「そうなのか? 修道院では水がゆでも食っているのか」
「極端すぎます。でもそうですね、味はそれが理想ですね……塩は入手が困難ですから」
「修道院は貧乏だと聞くしな。今度塩を寄付してやろうか」
「たぶん断られると思います。贅沢を覚えてしまうと、後が大変ですし」

 そうか、と考え深そうな顔で――本当に深く考えているのかいまいち信用できませんが――騎士はうなずきました。

「俺の家もな、親父が王宮を追い出されてしばらくは貧乏だった。たくわえなんぞ親父が研究と称した謎の実験で使い果たしたからな」
「……大変だったのですね」

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