託宣が下りました。

 そろそろ家人が夕食の準備を始める時間帯です。
 振り返ってみれば今日一日何もしていないような気がするので、せめて台所に手伝いに行ってみようかと、そんなことを思って立ち上がりました。

 ひょっとしたら騎士が食べに戻ってくるかもしれない。それなら彼に、自分が作ったものを食べてもらいたい――。

 ……残念ながらわたくしには、一番精のつきそうな肉料理は調理できないのですが。



 夕食ができあがるころ、ありがたいことに、騎士は本当に帰ってきてくれました。

「巫女が作っただと……!?」

 食卓に並べられた料理を、騎士は食い入るように眺め回しました。「そう言えば見たことのないような料理があるな!」

「しゅ、修道院の献立ですから……お口に合うかどうか」
「修道院ではこんなに量が少ないのか? 断食の訓練でもしているのか」
「……これでも量を増やしたほうなのですけど……」

 家つきの料理人さんに『絶対足りない』と言われ、増やしてはみたのですが……彼はイメージ通りというか、大食漢のようです。

 もちろんテーブルに並んでいるのはわたくしの作ったものだけではありません。中央に鎮座するのはローストされた大きな牛の肉の塊です。修道院の主義などここでは当然無視されますし、わたくしだって騎士にそれを押しつけるつもりなどありませんから、自分だけ遠慮することを家人の方には話してあります。

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