託宣が下りました。
これまでずっと楽しげに話していた彼の姿の裏にあるものを、信じたい思いでした。悪い報せはまだない――と。
問題ない、と騎士は誇らしげに答えてくれました。
「今日会える分は全部会ってきたから大丈夫だ。中には会議中だから後にしろとぬかす輩もいたので会議室にアレスとともに乱入して話をつけておいた。まったく、優先順位がなっとらん」
「か、会議中に入ったのですか」
「当然のことだろう? ことは王太子の命に関わる――と言ってもこっちはそんなことはどうでもいいんだが。ただ、疑惑は早く晴らさねばならん。それこそ国政に響く」
「………」
「俺が怒鳴り込んでアレスが取りなす。昔からこれがなかなか効いてな。他の連中には、アレスが聖母か何かのように見えるらしい」
「………………」
きっとその聖母はものすごく胃を痛めながら場をおさめているのではないでしょうか。
「今日会った中では――」
騎士はテーブルに両肘をつきました。おもむろに目を細め、何かを思い出すかのような顔をします。
「エヴァレット卿とは、もう一度会わなくちゃならんかもしれんな。どうも、態度が煮えきらん」
「エヴァレット卿……」
わたくしにも少しはなじみのあるお名前です。王室監査室長のジャン・エヴァレット卿は、修道院の監査を行っている立場でしたから。