託宣が下りました。
「いろいろ不満だがまあいいだろう。卿にとっては最大の妥協なのだろうし。修道長の前で滝のように汗をかいていたことからして、それなりに真剣に場に臨んでくれたのだろうし」
「いちいち口に出すなお主は! ふん、まったく!」
ぷりぷりと怒る卿。いったい何を無理強いされたのでしょうか。
「修道院に行くのは後でも良かったのではないかな、ヴァイス。急ぐような用ができたかい?」
アレクサンドル様が問うと、騎士は渋面を作りました。
「王宮で王太子殿下が陛下に謁見する場に立ち会ったんだ。そうしたら王妃殿下が暴れなさってな。『魔王が再臨するとの託宣のもとで王子を下賎の者と結婚させるなど、国民の不安をあおるようなこと許すまじ』とのことで」
……それがどうして国民の不安をあおることになるのでしょう。
ことは未来の王妃たる女性の話です。身元の不安な者では国民が喜ぶはずもないと、そういうことでしょうか。
たしかに……そもそもラケシスにはこのわたくしの妹という汚点があります。託宣を、みっともない形で取り消されたわたくしの。
「それで、ラケシス殿の立場復権のためにまず巫女の復権が必要と思ってな」
「――え?」
「それに、シュヴァルツ殿下も無茶を言い出した。『魔王のいない平和な世の中であればいいんでしょう!』とか何とか……で、俺たちに一刻も早く出立するようにと」