託宣が下りました。
わたくしは退こうとしました。けれどベンチは端で終わっていました。
腕が――ヨーハン様の腕が、わたくしの肩を強く抱き寄せて。
「……ねえ、アルテナ様。僕があなたを好きだったこと、知っていますか」
「―――」
言葉が出ません。抱き寄せられた肩が痛い。掴まれた肩が痛い。あえぐことしかできない。
「ああ……あなたは本当にかわいらしいですね。そんな弱々しい顔をしていてさえも」
結婚するんですって――? 彼は皮肉な笑みを唇の端に刻みました。
「いよいよあなたはヴァイス様のものになるわけだ。ああ、本当に憎たらしい――」
わたくしの肩を掴む手にいっそうの力がこもり、わたしは痛みで小さな悲鳴を上げました。
「僕だってあなたがほしかった。あの男は僕のほしいものを全部持っていく。強さも、凜々しさも、あなたも、全部!」
「――ヨーハン様――」
ようやく名前を呼ぶと、彼は嬉しそうにとろけるような目をしました。
「ねえ、僕のものになってくれますか?」
顔が近づき、息が、頬にかかりました。
わたくしは必死で首を振りました。違う、こんなのはヨーハン様じゃない!
「――わたくしはヴァイス様と結婚する身です。お願い放して!」
息も絶え絶えにそれだけ叫ぶと、ヨーハン様の目の色が変わりました。