託宣が下りました。

 彼はわたくしを抱き寄せ、ベンチへと押し倒しました。

 固いベンチ。痛みの走る背中。真上から見下ろしてくるヨーハン様。暗くて顔がよく見えない。

「……そう言うと思ってました。だから僕は――こうするしかない」

 顔がいっそう近づいて――
 わたくしは唇を奪われました。

 あまりにも強い、押しつけるような口づけでした。顔を動かそうにも動かせない。呼吸をする隙もない。

 やがてわたくしは気づきました。唇の隙間から――何かが忍び込んでくる。

 舌、じゃない。もっと――もっと冷たいもの。冷たくて不定型な、空気のようなもの。
 冷たい息を、吹き込まれているような。

 けれどそれは呼吸じゃない。わたくしの喉を通り、臓腑を通り、ぞろりぞろりと浸食していく。
 そしてそこから――広がっていく。体の全部に。手足の先端にまで。

 ようやく唇を放したヨーハン様が、耳元で囁きました。

「ごめんなさい。僕は……抗えなかった」

 そんなかすかな謝罪を最後に――

 わたくしの意識は、ぷつりと途絶えました。



 次に目を覚ましたとき、最初に見えたのは騎士ヴァイスの姿でした。

「アルテナ! 目が覚めたか」

 心配そうにわたくしを覗きこみます。わたくしは何かを答えようとして、激しい頭痛に襲われました。

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