託宣が下りました。
彼はわたくしを抱き寄せ、ベンチへと押し倒しました。
固いベンチ。痛みの走る背中。真上から見下ろしてくるヨーハン様。暗くて顔がよく見えない。
「……そう言うと思ってました。だから僕は――こうするしかない」
顔がいっそう近づいて――
わたくしは唇を奪われました。
あまりにも強い、押しつけるような口づけでした。顔を動かそうにも動かせない。呼吸をする隙もない。
やがてわたくしは気づきました。唇の隙間から――何かが忍び込んでくる。
舌、じゃない。もっと――もっと冷たいもの。冷たくて不定型な、空気のようなもの。
冷たい息を、吹き込まれているような。
けれどそれは呼吸じゃない。わたくしの喉を通り、臓腑を通り、ぞろりぞろりと浸食していく。
そしてそこから――広がっていく。体の全部に。手足の先端にまで。
ようやく唇を放したヨーハン様が、耳元で囁きました。
「ごめんなさい。僕は……抗えなかった」
そんなかすかな謝罪を最後に――
わたくしの意識は、ぷつりと途絶えました。
*
次に目を覚ましたとき、最初に見えたのは騎士ヴァイスの姿でした。
「アルテナ! 目が覚めたか」
心配そうにわたくしを覗きこみます。わたくしは何かを答えようとして、激しい頭痛に襲われました。