託宣が下りました。

「ああ、無理に喋ろうとしなくていいからな。今下にクラリスが来ている。呼んでくる」

 そう言って慌ただしく部屋を出て行く騎士。

 わたくしは痛みの消えない頭をゆっくりと動かして、辺りを見渡しました。

 ……ここ数週間でようやくなじみ始めた、騎士のお屋敷にあるわたくしの部屋です。やさしい柔らかさのベッドが、わたくしの痛む体を包み込んでくれています。

 そう、痛むのは頭だけではありませんでした。手足も、胴体も、重く何かがのしかかったように動きません。

 いえ――

 のしかかる、という表現はおかしいでしょうか。すべて『内側から』なのです。
 まるで体の内側に重い石が生まれてしまったような――

 それに気づいたとき、わたくしはどうしようもない焦燥を覚えました。このままではいけない。早く起き上がらなくては。

 起き上がらなくては――

「アルテナ、クラリスをつれてきたぞ――アルテナ! 起きて大丈夫なのか?」

 騎士が戻ってきたとき、わたくしはベッドの上で上半身を何とか起こしたところでした。

 騎士に向かって微笑みかけます。大丈夫、わたくしはまだ動けると。
 相変わらず頭はガンガンと痛みますし、体は内部から重いのですが――

 騎士は慌ててわたくしの横までやってくると、わたくしの額に手を当てました。

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