託宣が下りました。
「やはりまだ熱がある。寝ていたほうがいい」
「いえ……」
わたくしは頑として聞きませんでした。
もう一度横になってしまったら、二度と起き上がれなくなる。そんな不安があったのです。
「……大丈夫? 体のどこがおかしいの……」
クラリス様がしずしずと近寄ってきて、わたくしの顔を覗き込みます。
「クラリス! 治癒魔法をかけてやってくれ」
「慌てないでヴァイス……。その前に原因をつきとめないくては治癒はできない」
「原因? 風邪か何かなのだろう?」
何でも――
わたくしは王都の公園のベンチで一人眠りこけていたのだそうです。それを通行人が見つけ、騒ぎになって、騎士の耳にも入ったのだとか。
この寒い中そんなことをしていれば、風邪を引くに決まっています。そう、風邪なのです――原因が分かって、わたくしはほっとしました。風邪なら、体が重いことにだって説明がつくでしょう。
「……一応、風邪の治癒術をかけるけれど……」
クラリス様の翠の瞳は、油断なくわたくしを見つめています。
わたくしはなぜか落ち着かない気分にさせられました。まるで自分が何か悪いことをしたかのように。
なぜ? わたくしは何もしていない――
「……ねえ」