託宣が下りました。

「……体におかしいところは? 痛いところは?」

 クラリス様はゆっくりと、わたくしから容態を聞き出していきます。
 おかしいところ。頭が割れるように痛い。体が重い。まるで石を呑み込んだよう。

「……それだけ?」

 喉は痛いかと聞かれました。

 言われて気づきました。喉に、何か引っかかるようなものがある。
 痛いのではありません。大いなる違和感――とでも申しましょうか。

 それを聞いたクラリス様は沈黙しました。改めてわたくしの体を頭の先から足の先まで眺め、それからふっと息を吐き、

「……とにかく、治癒魔法をかけてみましょう……」

 彼女は思いの外強い力でわたくしを寝かしつけます。

 わたくしの手を通してかけるという治癒魔法。たしか、人の自己回復能力をアップさせる効果があるのだと聞きました。

 真正面から怪我や病気そのものを〝治す〟術もあるそうですが、それを行うと、時間が経ったのち被術者の体に反動がくるのだとか。なので、魔物との戦いのような緊急の場合を除いて、そういう術はほどこされないのだそうです。

「じっとしていて……」

 クラリス様は長いまつげを伏せ気味に、わたくしの手から力を注ぎ込みます。

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