託宣が下りました。
――光が、わたくしの体に広がっていく――
わたくしは。
思い切り、彼女の手を振り払いました。
お腹の中で何かが反発したような、何かが爆ぜるような、そんな感覚がありました。
何よりも、
――気持ちが悪い――
淡い光が体の中を進んでくることが、どうしようもなく嫌だと、そう感じたのです。
「アルテナ……?」
クラリス様が柳眉を寄せます。わたくしは罪悪感で、彼女から顔をそらしました。
「ごめんなさい……術は、いりません」
大丈夫。ただの風邪なのだから自力で治せる。治癒魔法など必要ない。
「アルテナ」
騎士がわたくしを覗き込みます。わたくしは、何とか笑ってみせました。
「しばらくじっとしていたら……治りますから」
「そうか? あなたは無理しいだからな、治癒魔法は絶対に必要だぞ」
「いいえ。――いいえ」
今と同じ感覚を味わいたくなかった。わたくしは異常なほどの頑固さで首を振りました。頭を動かすたびに痛みましたが、それも構わないほど嫌でした。
「……そう」
クラリス様が長い髪をさらりと後ろへ流し、冷ややかな声で言いました。
「本人がそう言うなら仕方がない……ヴァイス、私はおりる」
「クラリス! 頼む――」
「本人が嫌がっている」