託宣が下りました。

 騎士とクラリス様の押し問答を、わたくしは耳の痛い思いで聞いていました。

 ――ここから逃げてしまいたい。

 わたくしは何と失礼なことをしてしまったのでしょう。せっかくわたくしの身を案じてクラリス様は来てくださっているのに。

 ああ――

「ク、クラリス様、また――落ち着いたら、もう一度……」

 やっとの思いでそれだけを言いました。
 クラリス様は揺らがぬ翠の瞳で、わたくしを見つめました。

「……いいわ。私もしばらくこの屋敷に滞在する……また挑戦しましょう」

 良かった、怒っていない。安堵の思いでわたくしは「ありがとうございます」と彼女に礼を言いました。



 クラリス様が一階に戻り――
 騎士だけが、わたくしの傍らに残りました。

「カイやアレスも来たがっていたんだがな。容態が落ち着くまで来るなと言っておいた」

 ベッドの端に腰かけ、もう一度わたくしの額に手を当てます。

「……熱いな」

 そうなのでしょうか。

 体は重いばかりで、熱さは感じません。でも……何気なく重い手を自分の頬に当ててみると、たしかに燃えるように熱いのです。

「まだ頭は痛いか? 体は重いか?」

 騎士は心配そうに尋ねてきます。
 わたくしは小さく首を振り、

「……お願いです。喋ると……痛むのです」

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