託宣が下りました。
「アルテナ……」
愛しい名を呼び、両手を見下ろす。
かつて彼女が握りしめてくれた手とは、違うけれど。
「……俺は、少しは優しくできるようになったか……?」
彼女は魔物に取り憑かれたまま行方不明。胃の奥が、ぎゅっと痛みを訴える。
ああ、どうか無事でいてくれ。どんな姿になっていてもいいから。
「ヴァイス。大丈夫か」
アレスがやってきて、ぬるま湯の入ったコップを手渡してきた。まるでクラリスのハーブティーが空になったタイミングを見計らったようだった。
寒い中、冷たくない飲み物はそれだけでありがたい。
ヴァイスはそれを一飲みに飲み干し、立ち上がった。
「大丈夫だ。俺も捜索に戻る」
「――王宮の学者どもに話を聞くことについてなんだが……」
アレスは歯に何かが詰まったかのような声で言う。
たった今まで、アレスは王宮に集まっているはずの学者団と話をしてきたはずだ。
「どうだった?」
「どうも、うまくない。魔物をはがすには魔物がどこから入ったのかを知らなくてはならないと、その一点張りで」
「それを調べろという話だろう!?」
ヴァイスはイライラと舌打ちする。本当に役に立たない学者どもめ。