託宣が下りました。
「嘘じゃないからといって許されると思うなよ」
ヴァイスはうなるように、ぎりぎり噛み締める歯の間からそう言った。
「はい」とヨーハンはうなだれた。
「僕は……誘惑に負けました。魔物はより清廉な存在を求めます。それを穢し、貶めるために。アルテナ様を選んだのは、僕と魔物の利害が一致……したからだった」
「魔物と利害が一致しただと?」
「僕はアルテナ様がほしかった」
ヨーハンは目を閉じる。もう一度殴られると思ったのだろう。
馬鹿めとヴァイスは旧知の友人を罵倒する。固めた拳はそのままに、ありったけの苦さを溶かした声で。
「来るなら来いとたしかに言った。だが、これは卑怯だ」
「分かっています……」
魔物に取り憑かれるとどれほど気が狂うものなのか、ヴァイスは知らない。
だがどうしても許せなかった。魔物学者であるヨーハンなら、魔物に取り憑かれたときの抵抗の仕方くらい知っていてもおかしくなかったはずなのに。
ヨーハンは負けたのだ。
また、自分に負けたのだ。
「ヴァイス、私たちには分からない葛藤もある。決めつけるんじゃない」
まるでヴァイスの心中を見抜いたかのようにアレスが言う。
ヴァイスは奥歯が折れるかと思うほど歯を噛み締めていた。この男のせいでアルテナが、今や生死もわからぬ状態だというのに。