託宣が下りました。
「シェーラお嬢様はただいま誰ともお会いになりません。お帰りください」
「誰とも会わない? どうして?」
「ご気分がすぐれないのです」
……これは口実でしょうか、それとも真実でしょうか。
「それならぜひお見舞いを」
「なりません。旦那様がお許しになりません。お帰りください」
門番はかたくなで、てこでも動きそうにありません。
わたくしは小さく深呼吸をしました。焦らない、焦らない……
(少なくとも、シェーラは間違いなくこの別荘にいる)
門番と適当な会話を交わし、わたくしは一度馬車に戻るふりをしました。
そこから方向転換をし、別荘の裏に回ります。裏は山に面し、さらに深い林になっていて、塀がありません。勇気を出して林に突入ししばらく歩くと、幸いなことにちゃんと屋敷まで出ることができました。
人がいないことを願いながら、見える窓の数々にシェーラの姿がないかさがします。
(シェーラ。シェーラ……!)
ひたすらその名を心の中に抱きながら歩くこと少し。
角をひとつ曲がったところで、わたくしはようやく捜し人を見つけました。
(シェーラ……!)
一番日当たりのよい一角、最上階の窓に、彼女の姿がありました。部屋の中で、本を読んでいるのでしょうか。
美しく着飾っているのに……その横顔はひどく憂鬱そう。これがあの友人だろうかと、一瞬分からなくなるほどに。
わたくしは窓に駆け寄りました。
「シェーラ!」
勇気を出して名を呼ぶと、窓の向こうではっとシェーラが動きました。こちらを見、目を丸くします。
「ア、アルテナ――」
「良かった、シェーラ」
わたくしは両手を上に差し出しました。届くはずがありません。
それでも、そうせずにいられませんでした。
けれどシェーラの顔色は治りませんでした。むしろますます青くなり、ふるふると首を横に振ります。
「だめよアルテナ! 帰って……!」
「でも、シェーラ」
「お願い帰って! 人が来るわ!」
シェーラは横を向きました。たぶんドアのほうを見ているのでしょう。人が来る――
「………っ」
ここで掴まってはシェーラに迷惑がかかる。わたくしは身をひるがえしました。