託宣が下りました。
 わたくしの唇を、騎士の唇がなぞります。ぞくぞくと体の芯が震えるような口づけ。次には下唇を食まれ、「ん――」乱れた呼吸と一緒におかしな声が漏れました。

 騎士の唇はやがて唇を離れ、わたくしの首筋をたどり下りていきます。
 胸元を開き、吸いつくように触れ、痕を残し。ああ、どうして。触れたところがじんじんとうずく――。

「……っ、やめて……っ!」

 わたくしは決死の思いで騎士を押し放しました。
 このまま呑み込まれてしまいそうで恐ろしかった。わたくしは星の巫女です、そんなわけにはいかないのに。

 何より今は、シェーラのことが一番大事で。

 わたくしは訴えるように騎士を強く見つめました。
 騎士はそんなわたくしを静かに見つめ返し――やがて、頭を下げました。

「悪かった」
「……」
「そろそろ行くか。あんまり時間をかけると嵐になるかもしれん」

 わたくしの上着を着せ直し、騎士はわたくしの手を取りました。「さ、シェーラ殿のところへ向かおう」

「……」

 体の熱がなかなかおさまりませんでした。動悸は変わらずわたくしをさいなみました。

 泣きそうな思いで、わたくしはつぶやきました。どうして。
 どうしてこんなことを、と。

 騎士はあっけらかんと言いました。

「うん? 勢いだ」

 殴ってもいいですか。



 騎士はブルックリン家別荘の間取りをなぜかちゃんと把握しているようでした。伯爵が今夜いないことといい、勇者様一行ともなると、そんな情報も手に入るのでしょうか。

「ここがシェーラ殿の部屋だ。鍵はかかっていない」
「え?」
「開けるぞ」

 あ、とわたくしが言いかける間もなく、騎士は大扉を押し開けました。

「寝室は奥だ」
「な、なんでそんなことまで」
「失礼する」

 寝室につながるらしき扉を、騎士が無遠慮に開けます。

「シェーラ殿、いるか」
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