かりそめ蜜夜 極上御曹司はウブな彼女に甘い情欲を昂らせる

「これがなにか?」
「よく見なさいよ。ここに写ってるの、遊佐専務とあなたじゃないの?」
 
 そう言われてみた先には、手を繋いで歩く私と瑞希さんが間違いなく写っている。これ以上、どうにも誤魔化せそうにない。

「……遊佐専務と、水族館に行きました」
「やっぱり」
 
 香野さんは呆れ口調で言うと、大きく息を吐いて椅子に座りなおした。そのあとに続くように三人の女性も座り、会議室に険悪なムードが漂い始める。

「どういうつもり? なんで遊佐専務と水族館に行くことになったの?」
 
 香野さんは居丈高な態度を見せ、威圧的な視線になにも言えなくなる。

「あなた、この会社に入社してまだ二年目よね? なにしに会社に来てるわけ? 遊佐専務もどういうつもりかしら。麗華さんっていう素敵な婚約者がいるっていうのに、こんな子と水族館に行くなんて」
「麗華さん?」
 
 おもわずボソッと呟く。香野さんが言った“婚約者”というワードに胸の奥がズキンと痛み、頭の中がまっしろになってしまった。


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