かりそめ蜜夜 極上御曹司はウブな彼女に甘い情欲を昂らせる
「あなた知らないの? 遊佐専務には素敵な婚約者がいるのよ。麗華さんは大学の先輩で、トミタファイナンシャルグループ頭取の一人娘なのよ。容姿端麗、才色兼備、あなたには到底かなわない相手だわ。からかわれてるだけだって、気づかなかったの?」
そう言って香野さんは、勝ち誇ったような表情を見せた。
瑞希さんに婚約者? しかもその相手が富田財閥の流れを汲む、トミタファイナンシャルグループ頭取の一人娘だなんて、そんなこと全然知らなかった。
突然知らされた、想像もしていなかった現実に打ちのめされる。瑞希さんのそばにいることで持たされていた自信が、私の中からシュルシュルと音を立てて消えていった。
瑞希さん、どうして……。
彼からもらった愛の言葉の数々を思い出し、どうにも堪えきれない気持ちがこみ上げる。
あの言葉の全部が嘘だったなんて思いたくない。婚約者がいると聞いた今でも瑞希さんのことを信じたい──そう思う反面、裏切られたような深い悲しみに胸が強く締め付けられた。