かりそめ蜜夜 極上御曹司はウブな彼女に甘い情欲を昂らせる
 
 私なんかが瑞希さんほどの人と付き合うこと自体、最初から間違いだったんだ。そんなこと少し考えればわかることなのに、なんて身の程知らずな事をしてしまったんだろうと項垂れた。後悔のため息を漏らすと、なにか勘違いでもしたのか、香野さんがいきなり怒り出した。

「あなたまさか、彼の弱みを握って脅迫してるんじゃないでしょうね?」
 
 意味のわからない言いがかりに、どうしようもない嫌悪感を抱く。

「脅迫なんてそんなこと、するわけないじゃないですか!」
 
 あまりにもひどい言葉に、声を荒げてしまった。

 信じられない……。どうして香野さんに、そこまで言われなきゃいけないの?
 
 そんな怒りにも似た気持ちが膨れ上がり、彼女に強い視線を向けてしまう。

「なによ、その目は。泥棒猫のくせに」
「泥棒猫だなんて、そんなつもりは……」
「ないっていうの? 子どもっぽい顔をして、なかなかの策士ね」
 
 次から次へと矢継ぎ早に残酷な言葉を浴びせられて、とうとうなにも反論できなくなって口を閉ざす。
 
 もう、どうでもいい──。
 
 そんな投げやりな気持ちになって、香野さんに向かって深々と頭を下げた。


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