かりそめ蜜夜 極上御曹司はウブな彼女に甘い情欲を昂らせる
泣き顔を隠すよう、簡単にメイクを直して荷物を持つ。エレベーターホールに向かおうとしたが、もしかしたら香野さんたちと鉢合わせでもしたら厄介だと、階段で下りることを選択。なにも考えず一段一段下りていても、脳裏に浮かんでくるのは瑞希さんの顔。
実は今晩は、帰りに瑞希さんのマンションに行くことになっている。彼は出先から直帰の予定だが、同僚と夕食を済ませてくると言っていたから、この時間ならまだ帰っていないはずだ。
彼にはもう、個人的に会うことはできない。
それは別に、香野さんたちに『お付き合いしていません』とか『二度とこのようなことのないように気をつけます』と宣言してしまったからじゃない。
やっぱり私では瑞希さんと釣り合わない──そう気づいてしまったから。
彼は私より、十二歳も年上の大人の男性。しかもアシタホールディングスの専務で次期社長と言われている彼と付き合うなんて、最初から無理な話だったんだ。