かりそめ蜜夜 極上御曹司はウブな彼女に甘い情欲を昂らせる
「直帰のつもりだったが、やり忘れたことがあって一度戻ったんだ。ちょうどよかった、すぐ終わるから一緒に帰ろう」
瑞希さんは掴んでいた私の手を離し、階段を上り始める。でも私は香野さんたちのこともあって、その場から動けずにいた。それに気づいた瑞希さんが振り向き、階段を上る足を止めた。
「どうした?」
怪訝そうな顔をする瑞希さんから、思わず目を逸らす。こんなことをしたら余計に変に思われるとわかっていても、今は彼の顔を真っすぐ見ることができない。
黙ったまま俯いていると、瑞希さんが階段を下りてくる気配に身体が強張る。どうしようもない緊張感に逃げようと思っても、まるで金縛りにでもあったように身動きひとつできない。
その間に瑞希さんは私のところまで下りてきて、怪しむような表情で私の顔を覗き込んだ。
「なにがあった?」
瑞希さんは右手を上げ、私の頬をそっと包み込む。一瞬身体を震わせてしまったけれど、それでも俯いたままだんまりを貫き通した。
「なに、俺には言えないことなのか?」