かりそめ蜜夜 極上御曹司はウブな彼女に甘い情欲を昂らせる
いつまで経っても私が口を開かないことに痺れを切らしたのか、瑞希さんの口調がほんの少しきつくなる。怒ったような表情をした瑞希さんに、さすがにこのままではマズいとぼそりと呟いた。
「……なんでもありません」
「なんでもないわけないだろう。そんな態度を見せられて、はいそうですかって俺が納得するとでも思ってるのか?」
さっきの口調を気にしているのか、それとも私の態度に呆れているのか。今度は諭すようにゆっくりと話し、私の身体を抱きしめた。途端、香野さんの顔が頭をよぎり、ハッとして瑞希さんの身体をグッと押し離した。
「離してください! こんなところ、誰かに見られたら困ります。それに、瑞希さんだって困るんじゃないですか?」
こんなこと言うつもりじゃなかったのに、堪えきれなくなった思いが口をついて出てしまう。
「どういう意味だ?」
「それは……」
一度口にしてしまった言葉は消せないのに、今更後悔して悲しくなってくる。もうこれ以上は無理。瑞希さんのそばにいると、胸が苦しくてたまらない。
それでもなんとか涙は堪えて、深呼吸をすると平静を装った。