公然の秘密

「今さらながら、あんたの名前を聞いてなかったなって思って」

「と、友達だとか何とか言って自分の家にあげといてですか？」

「よく行くスーパーで見かける店員さんだなと思ってる」

名前を言わなかった自分も悪いのかも知れない。

そう結論をつけると、
「加藤木柚愛です」
と、柚愛は自分の名前を言った。

「ユアちゃんね、いい名前だ」

尾関がそう言った後で、
「これで、俺たちは正式に友達になった」
と、笑った。

「友達って…と言うか、正式って何ですか？」

あくまでも友達にこだわっている尾関は何なのかよくわからなくて、柚愛は思わず笑ってしまっていた。

「あっ、やっと笑った」

尾関が言ったので、柚愛は思わず頬に手を当てた。