公然の秘密
「ーーッ…」

自分からキスしたのは、初めてだった。

突然のことに尾関が目を丸くして自分を見ているのがわかった。

柚愛はそっと唇を離すと、
「ーーいいですよ」
と、言った。

「…と言うか、遠回しが過ぎます」

「…すまん」

彼なりに考えて誘ってくれたのだろうと言うことはわかった。

それが尾関麗一と言う男なのだ。

「でも…そう言うところも含めて、あなたが好きです」

「…後で覚えとけよ?」

「覚悟をしてます」

そんな言いあいをした後で一緒に笑いあった。

「柚愛」

尾関に名前を呼ばれたかと思ったら抱きしめられた。

「愛してる」

囁くように言った尾関に、
「私も愛しています」
と、柚愛は返した。
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