公然の秘密
「最終的に決めるのはあんた自身だから、俺はこれ以上のことは何も言わない。

こんな考え方もあるんだなと思って、心の片隅にでも入れて置いてくれ」

尾関はそう言って話を終わらせたのだった。

落ち込んでいた自分の心が軽くなったのがわかった。

それどころか、温かいものに包まれているような気もする。

「尾関さん」

「んっ?」

「話を聞いてくれてありがとうございました」

柚愛はお礼を言った。

尾関は少しだけ目をそらすと、
「友達だし、何かあったら話を聞くって言ったのは俺だし…当然のことをしたまでだから」
と、呟くように言った。

「家はどこなの?

もしよかったら途中まで送るよ」

尾関はベンチから腰をあげた。
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