言ってみたい言葉
「石田さんっ」
「今日、決心して来たんでしょ?」
って。
「え?どうして・・・?」
「わかるんだよ。ここんところそういう人多いから」
「そういう人?」
「そうそう。初めて言うのは恥ずかしいからね。ああ、俺、耳ふさいどくから言っていいよ」
 作家のおじさんは両手で耳をふさいで向こうを向いてくれている。
「すみませんね、なんか大袈裟で。あの人、悪気はないんですけど」
「あ、いえ。じゃ、お言葉に甘えて、言ってもいいですか?」
「はい、どうぞ」
「・・・」
 あの超常連の作家のおじさんが聞いてないこんなチャンス2度とないかも。
「あの・・・」
「はい」
「・・・好きですっ」
「・・・え?」
「もう言ったかぁ?」
「あ、『松川バーグ』1つ下さいっ!」


ー完ー


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