喧嘩最強男子の溺愛

「帆乃香さ、何か色々と勘違いしてねーか?」

島田くんが混乱している私を見かねて話し始めた。

「まず、俺と海人は兄弟なの。歳は離れてるけどな。それと、あの時の3人の相手は俺だから。間違ってもアイツらの仲間って言うなよ」

「はい? 2人が兄弟? えーっと、それは本当の話なの?」

「嘘ついてどーすんだよ、海人は俺の弟。くそ生意気なガキだけどな」

「生意気じゃないよ。帆乃香はそこが可愛いって言ってくれるんだから。ね、帆乃香」

「そうだね、海人くんは可愛いよ」

そっか。海人くんの話し方って確かに島田くんに似てるかも。

「じゃ、助けてくれた人って・・・、本当に島田くんだったの?」

「ああ。あの時は暗かったし、帆乃香も泣いてただろうし、俺になんて全く気付いてなかっただろうけど」

私は姿勢を正して、島田くんに向かってお辞儀をしながらお礼を言った。

「島田くん、あの時は助けてくれて本当にありがとうございました。あの時、本当に怖かったの。海人くんに何かあったらどうしようって思ってて。でも私一人では何もできなくて」

「いや、こっちこそ。あの時、海人を守ってくれてありがとう」

「私、守れていなかったよ。私がちゃんと海人くんを送ってあげていたらあんな事にはならなかったから。私のせいなの。海人くん、ごめんね」

島田くんがあの3人組じゃなかったことに安心して、ずっと気になっていた海人くんが元気にしていてくれたこと、そしてあの日の怖い出来事を思い出して涙が出てきた。

「ふぇっ、ふぇっ」

人目も気にせず泣き出した私の手を握り、

「僕さ、帆乃香を守れる男になるんだ。そしたらもう郁人は要らないだろ」

海人くんがとても心強いことを言ってくれた。

海人くんは本当に可愛い。私は再度屈んで、海人くんを抱きしめた。

「海人くん、頼もしいね。ありがとう」

それを見ていた島田くんが、チッと舌打ちして、

「海人はホントに生意気なクソガキだな。俺に勝てるようになってから言え」

「でもさ、帆乃香が好きなのは僕の方なんだよ。だって郁人は島田くんって呼ばれてるし。僕は海人くんだからね」

えっ? 呼び方でそんなに「好き」に差が出るものなの?

「海人はいいとこに気付くな。さすが俺の弟だ。帆乃香、聞いてた? お前が名前呼びしてんのは海人もだろ。いつまで俺のことを島田くんって呼ぶんだよ。これじゃ俺が海人に負けてんだよ」

「そんなことで勝ち負けって・・・。」

島田くんの言っていることがおかしくて、泣きながら笑った。

私と島田くんのやり取りを聞いていた海人くんが私の服を掴んで引っ張り、私の興味を島田くんから海人くんへと移させた。

「ね、帆乃香。遊ぼうよ。また靴飛ばしの競争ね」

私は島田くんをそっと見る。

すると島田くんは優しい顔で海人くんを見つめていて。

「島田くん、まだ公園にいる? 海人くんと遊んでいる時、いてくれる? ごめん、いて下さい」

ここに海人くんと二人きりになるのはまだ怖いから、島田くんにいて欲しいとお願いをした。

「ああ、いるよ。悪いけど海人の相手してやってくれ」

「うん。ありがとう。じゃ、海人くんブランコ行くよー。今日は私が勝つからね!」

島田くんがここにいてくれるだけでとても安心できた。

海人くんが島田くんは喧嘩が強いって言っていたからかな。

そんな風には見えないけど。

私と海人くんが靴飛ばしで遊んでいる側のベンチでスマホを見ている島田くん。

そんな島田くんにブランコに乗りながら声を掛けた。

「郁人ぉー! 一緒に靴飛ばし、しようよ」

うわ、自分で言ってて恥ずかしい。

初めて島田くんの事を郁人って呼んでみた。

島田くんは持っていたスマホを手から落としそうになり、慌てていて。

それがとてもおかしかった。

「え? 聞こえなかったけど? 何て言ったの? 帆乃香」

「ふふっ。郁人って言ったの! 聞こえてるくせに」

それから島田くんも一緒になって、辺りが薄暗くなるまで靴飛ばしで遊んだ。

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