喧嘩最強男子の溺愛
靴飛ばしで遊び疲れたころ、海人くんがブランコから降りて、

「郁人、おなか空いたよ」

そうだよね、こんな時間まで遊んだら海人くんおなか空いちゃうよね。

私もそろそろ帰ろう。もう家には誰もいないだろうし。

「海人くん、おなか空いちゃったよね。いっぱい遊んでくれてありがとう。また、遊ぼうね。島田くんも、どうもありがとう」

「あ? 俺の名前! 島田に戻ってるから」

「ごめん、なんか慣れなくて。郁人、今日はありがとう」

「しばらくの間は家まで送るわ。アイツらがいつ現れるか分からないからな。念のためだから」

「どうもありがとう。本当は心細かったから、嬉しい」

「じゃ、僕も一緒に帆乃香の家に行く!」

そう言って海人くんが私の手を握って一緒に歩いてくれた。

3人で海人くんを真ん中にして並んで歩くこと10分。

「私の家、ここなの。海人くんと郁人、送ってくれてありがとう」

そう2人にお礼を言っていると、家からお母さんと竜也さんが手を繋いで仲良く出てきた。

お母さんはホステスの格好をして。竜也さんはホストのようなスーツを着て。

今、お母さんと竜也さんに会いたくなかった。

同じ学校の、しかも同じクラスの人に見られたくなかった。

「あら、帆乃香。相変わらず帰りが遅いのね。お母さんたち仕事に行ってくるわね」

「帆乃香ちゃん、たまには3人でご飯でも行こう。じゃ、行ってくるよ」

お母さんと竜也さんにそう声を掛けられて。

「いってらっしゃい・・・。」

それしか返事ができなかった。

お母さんが私の後ろに島田くんと海人くんが居るのに気付いて、軽く会釈をしたけど特に声を掛けることもなく脇を通り過ぎて行った。

おかあさんのキツイ香水の匂い。竜也さんのたばこの臭い。

お母さんたちが見えなくなると私は島田くんと海人くんに、

「変なところを見せちゃってごめんね。じゃ、お休みなさい」

島田くんたちの返事を聞くことなく急いで玄関へ入り、ドアを閉めた。

島田くんにどう思われたかな。

ううん、どう思われたってこれが私の生活。

ただ、隠せるものなら隠していたかっただけ。

明日、島田くんに会うのが少しだけイヤだと、思った。


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