年上同期から恋人へのロード
あれっ、牧瀬っ?間違いなくその後ろ姿は、肩を振るわせ、手は拳を握りしめ、鼻をすすっていた牧瀬だった。
えっ、泣いてるのか?
声をかけようかと思ったが、さっき先輩に向かって凜とした姿を思い出すと止めた。
牧瀬の行動を無駄にしてはいけない。
少し離れた場所から誰も入らないようにと様子を見ていたら、しばらくして牧瀬が出てきた。それは前を向いたいつもの牧瀬の姿だった。

それから、俺の牧瀬への見方は少し変わった。
よく見ると、いつも周りを気に掛けている。困っている人がいたら一番に声をかける。
いつも冷静な対応でいて、時折みせる屈託ない笑顔。
しっかりしていると思いきや、独りごと言いながら、自動販売機でコーヒーを押したつもりが間違ってとなりのビタミンドリンクが出てきて、「うげっ!」と声をあげたりして・・・
1人で残業していたから、声を掛けたら、椅子から飛び上がって
「な、なんだ、秋月くんか・・・びっくりさせないでよ・・・」
と涙目で後ずさりしながら椅子にぺたんと座ったり。
営業部のクレームの電話で管理部には関係なかったけど、人手も足りずにコピーを夜遅くまで手伝ってくれたり。
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