あなたは運命の人
「桐人君のパジャマ姿、初めて見ました……」

上下グレーの普通の前開きタイプのパジャマだが、桐人君はなにを着ても様になる。
それに整えられていない自然な髪も新鮮だ。

「恥ずかしいね」

照れ臭そうに指で鼻を擦る仕草が新鮮だ。

照れていた桐人君が私の顔を見ると言った。

「もしかして明日のことが不安?」

どうして分かるのだろう。
小さく頷くと桐人君は空いている私の隣に腰掛けた。

「どんな業務するの?」

「五時間だけだから簡単なものらしいですし、一応諒ちゃんが一緒に居てくれるみたいですが、明日のことが、不安で……。誰かに迷惑をかけてしまわないかと……」

「ちょっと待ってて」

そう言って立ち上がると桐人君はキッチンへ。
何かをレンジで温めるとこちらに戻ってきた。

「ホットミルクだよ」

差し出されたマグカップ。
私を落ち着かせるために作ってくれたらしい。
その優しさに胸がきゅんと疼いた。

お礼を伝えて受け取るとマグカップに口を付ける。

温かくてちょっと甘い。
砂糖を入れてくれたみたいだ。

胸の中まで甘くなった次の瞬間、背中には優しい温もり。
桐人君が優しく私の背中を撫でている。
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