あなたは運命の人
「君は昔から頑張り屋さんだから大丈夫」

落ち着かせてくれる優しい微笑みと台詞に既視感を覚える。


「美優なら出来るよ」

あの時は『美優ちゃん』だったけれど、この手つきも言葉も懐かしい。

高校の受験前日、あの時も緊張していた私にしてくれた。

あの時から貴方は私を落ち着かせてくれる。




次の日の朝、就活用のジャケットとスカートを着ながら緊張していた。

「夜ご飯は適当で良いから」

桐人君は気遣ってくれると今日も頑張ってと言ってくれた。

諒ちゃんのお父さんの会社は有名な製薬会社。
本社はとても大きなビルだった。

仕事はコピーを取ったり、シュレッダーに書類を掛けたり雑用業務。
精一杯やった。

昨日の桐人君のお陰か、足を引っ張ることなくやり終えた。


「送っていかなくて大丈夫か?」

「そんなに遠くないから大丈夫だよ」

諒ちゃんが家まで車で送って行くと言ってくれたが断った。
また桐人君を怒らせるわけにはいかないから。
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