やっぱり幼馴染がいいと彼氏に振られたら、彼のライバルと恋人の振りをする事になりました
転んだ。
盛大に。
それが原因で受け止めてくれた河村君と事故ったのだ。
多分誰も、見ていなかった……
とは言え、流石にその直後はお酒が飛んだし、挙動が普段の五割増しでおかしくなったのを覚えている。
しかもすっかり出来上がっていた亜沙美さんは私を送るどころでは無くなっており、他の子の家に泊まる事になったり──て、結局私は河村君に家に送って貰う事になったのだ。
勿論何も無い。ただだだ私が居た堪れなかっただけだ。
そんな私的な事情がある河村君なのだけど、ご都合により私の記憶から排除させて頂いておりましたが、お陰様でまざまざと思い出しましたですよ。ええ、まざまざと……
「消えたい」
「え?」
叫びながら走って逃げたいけど、そんな事が出来るのはフィクションだからだと思う。私には無理だ。
代わりに頭を抱えた。
「あのね、あれは事故だったでしょ?」
ぎゅっと目に力を入れて河村君を睨みつける。
「そうだね……あの後三上さんずっと謝ってたもんね。日向にも謝ったの?」
「……そ、れは……」
私は目を泳がせた。
「日向を見てるとそんな様子は無かったけどさ、三上さんはあれからサークル来なくなったし」
……智樹に言うべきだったのかは良く分からない。
あの飲み会自体、智樹は話題にして欲しく無さそうだったし、それに智樹はあの後どうしてたかなんて、気軽に聞く事も出来なくて……だからあの飲み会の日の話は、お互いにしなかった。