運命の恋人 ~上司は美しい悪魔の生まれ変わりだった~

「龍崎部長、私はこれから公園でランチをしようと思うのですが…よろしければご一緒にいかがですか…」

「うれしいな…お邪魔じゃなければ…一緒に良いかな?」

「…はい。公園はすぐ近くですので、ご案内いたします。」

しかし、私は自分の言ったことに後悔していた。


(…龍崎部長と一緒に昼食なんて…何てことを言ってしまったのだろう私!…緊張する…)


私は公園に到着すると、景色の良いベンチに部長を案内した。

丘の上にある公園のベンチからは、街が一望できる。
心地良い風も吹き、都会にいることを忘れるような場所だ。

そして自分は少し離れた位置のベンチに座ろうと、歩き出そうとしたところ…

「鈴木さん、隣で食べない?社内じゃないから上司だと思わないで…」

龍崎部長は私に向って、右手を差し出して微笑んだ。
私は心臓が煩く鳴りだしたのを気づかれないように、その右手に自分の左手を乗せた。
なぜか不思議と出された手に、自分の手を自然に乗せたことに驚いた。
龍崎部長はその手を優しく引き寄せて、自分の隣に座らせた。

(…どうしよう…ドキドキが止まらない…)

「良い天気だね…気持ち良いよ。鈴木さんありがとう…良い場所教えてくれて…」

笑顔で話す龍崎部長に思わず見惚れてしまう。
長身で端正な顔立ち、涼しげな瞳に引き込まれそうだ。
風に少し乱れた前髪がくらくらするほどの色気を醸し出している…

(…公園中の女性は龍崎部長をみんな見ている気がする…カッコ良すぎるよね…)

ただ、私にはどうしても気になることがあった。

(…でも…私…この顔…やっぱり知っている気がする…)

「鈴木さん…彼氏はいるの?」

突然の質問に驚き…言葉が出ない!

「ごめん…セクハラ上司だね。鈴木さんは可愛いからきっと彼氏がいるのだろうなぁと思って聞いちゃった…」

私は可愛いと言われただけで、顔に熱を持つのを感じた。

「り…龍崎部長は…ご結婚…されていますよね…」

「うん…結婚し・て・た。」

私はその言葉に、なんでそんな事を聞いてしまったのだろうと後悔する。
さらに焦ると、どんどん顔が真っ赤になるのが分かる。

(…どうしよう…変なこと聞いちゃった…)

「あ、あ、あの…ごめんなさい…知らなくて…私…」

焦る私に気付いたのか、龍崎部長は私に優しく微笑んでくれた。

「気にしていないよ。ごめんね慌てさせちゃったね…。もうずいぶん前の事だから気にしないで!」

それでもまだ気まずくて、下を向いていると、私の頬に何かが触れる感触があった。

優しく温かいふわっとした感触…

その感触に振り向くと…

どうやら龍崎部長は私の頬にキスをしたようだった。


(-----------な--------なにが…おきたの…!!)


さらに私の顔は火を噴くほど熱くなり…湯気が出そうだ。

私は驚きのあまり、どう対処して良いのか分からず、頭の中がキャパオーバーで真っ白になる。

「ごめんね…あんまり鈴木さんが可愛いから…彼氏に怒られてしまうね。」

龍崎部長はゆっくり立ち上がると、私の肩をポンポンと叩き、先に会社に戻って行った。

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