ふたつ名の令嬢と龍の託宣
 侍女たちは庭園までついていくことはできないため、エラは控えの間で待機しなくてはならない。

「リーゼロッテお嬢様」

 今にも泣き出しそうな心配顔のエラをゆっくりと振り返り、リーゼロッテはこくりとうなずいて見せた。そして、先ほどと同じ儚げな笑みを残して、ようやく庭園へと足を踏み入れる。

(まぶしいわ……)

 何年かぶりの直射日光に、リーゼロッテは宝石のような緑の瞳をそっと細めた。

 王妃の庭園は、薔薇を中心に色鮮やかな花々が咲き誇る、それは美しい庭だった。

(これを見られただけで、ここに来たかいがあったわ)

 頬にあたる風が心地よい。風を直に感じるのも、久しぶりのことであった。

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