ふたつ名の令嬢と龍の託宣
「頭に血が上りませんか? ジークハルト様」

 リーゼロッテは宙に浮くジークハルトを見上げながら声をかけた。

「…………………………まあ! そうなのですね」

 ジークハルトは祖先と言うだけあってジークヴァルトにそっくりだったが、観劇に出てくるような王子様のような出で立ちをしている上、よく見ると髪形もジークヴァルトとは違っていた。

 ジークヴァルトはいつも整髪料か何かで髪を後ろになでつけているが、ジークハルトはさらりとした黒髪を自然のままにしている。同じ顔だが前髪があるだけで、ジークハルトの方が少し幼い印象だ。

 そして何よりジークハルトは、透けて見える上に常に空中で浮いている。どこぞの電撃鬼娘のようなあぐらのポーズが、ジークハルトの基本スタイルだった。

 リーゼロッテは始めこそ戸惑いを感じたが、慣れれば二人を見間違うこともない。人好きのする笑顔を浮かべるジークハルトと、無表情が標準装備のジークヴァルトを、なぜ見間違えたのか、今思うとリーゼロッテは不思議でならないくらいだ。

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